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あざの耕平×黒崎真音
スペシャル対談「REINCARNATION」



*こちらの対談は「ドラゴンマガジン9月号」に掲載の対談の完全版となります
*楽曲の試聴は黒崎真音HPの下記のページにて可能です
 http://nbcuni-music.com/maon/contents/hp0008/index00170000.html



――今回のアルバム「REINCARNATION」は「東京レイヴンズ」のキャラクターへのトリビュート・アルバムとなっていますが、まず原作のあざの先生は本作の世界をどのように生み出されたのでしょうか?

【あざの耕平(以下、あざの)】 前の作品は剣戟のシリーズだったので、今度は魔法を中心に据えた作品を書きたかったんです。ちょうどそのころ和のテイストに興味があったので、それを合わせた結果、現代に活躍する陰陽師とその育成機関で学ぶ子どもたちを描こうと思い、骨子を固めていきました。「東京」というのは現代を舞台にした作品であることがわかりやすいように、「レイヴンズ」は陰陽師が黒い衣を纏っていることからオオガラス(大烏)に例えられる設定なので、「東京レイヴンズ」というタイトルにしました。

――黒崎さんはアニメ「東京レイヴンズ」の主題歌である「X-encounter」にはどんな思いを込めて歌われましたか?

【黒崎真音(以下、黒崎)】 最初に原作やアニメのシナリオを読ませて頂いたときに、主人公の土御門春虎くんの気持ちが自分とリンクする部分がすごく多かったんです。彼は少ない可能性であっても、とにかくやってみるというガッツある姿を見せるのですが、私にも元気や勇気がなくて動けなくなったときに無理矢理走りだすような経験がありました。その感情を重ねて疾走感あふれる曲にすれば、聴いた方にも「レイヴンズ」の世界を感じられるような曲になるのではと思って書いていきました。

――「REINCARNATION」の制作はアニメの最終回までをご覧になってからの取り組みとなりましたが作品に対する印象はOPテーマの時と比べどのように変化しましたか?

【黒崎】 印象が変わったことはたくさんあります。まず登場人物が強くなったり大人になったりという成長を感じました。逆に大連寺鈴鹿ちゃんはすごくカワイイところが増えていたり(笑)。みんな色々なことを経験しながら戦ってきて最後に至るというところに、戦うことの尊さや、意味がないことなんてないんだとか、すごくいろんな感情をもらいました。アニメの最終回が、まだ先の未来を感じさせる終わり方だったので、寂しい気持ちもありつつこれからの楽しみが残るような印象を受けました。

――今回、「東京レイヴンズ」のトリビュート・アルバムの企画を聞いたときの最初の印象はいかがでしたか?

【黒崎】 まったく予想していなかったのですごくビックリしました! 私自身、アニメがスタートするタイミングから主題歌を担当させてもらうことがこれまであまりなかったこともあり、「東京レイヴンズ」はすごく特別な存在なんです。ファンの方からも「X-encounter」の感想をたくさん頂き大事にしていて、また関われればという気持ちが自分の中にありましたので、こういった機会を頂いて必ず良いものを作ろうと思いました。

【あざの】 私もまったく一緒で、まず驚きました。あまり聞いたことがないですよね。キャラクターソング集ならある話ですが、ひとりのアーティストがキャラクターのテーマをそれぞれ歌って1枚のアルバムにするというのはこれまで聞いたことがなかったので面白そうだなと思いました。最初は春虎と夏目くらいかなと思っていたので、こんなに多くの曲を歌ってくれるということには驚きましたし、楽しみも増えました。こんなにたくさんのキャラクターの歌詞なんて私でも書けませんから(笑)。



――黒崎さんは歌詞を書かれるときにどのように膨らませて書かれますか?

【黒崎】 今回はトリビュート・アルバムとして、歌詞もコラボしている感じにできたらいいなと思ったので、人物の共感する部分やリンクする部分を汲み取って書くようにしています。「-Autonomy-」は春虎くんをイメージして書いた曲です。「X-encounter」はどちらかというと前半の春虎くんのイメージでしたが、「-Autonomy-」は後半の春虎くん。夏目を失った時の絶望感とか自分が自分でなくなってしまうような衝動に駆られている彼を見て、彼が自分の中で答えを見つけてまた前に突き進んでいく姿がすごく格好良かったので、それをイメージして書きました。"Autonomy"という言葉には"自律"とか"導く"という意味があり、そういった言葉選びにも注意しました。この曲だけはI'veさんのスタジオで早めに録音をしたのですが、いろんな声質で録り、結果的にちょっと力強い声で男の子の曲らしさを意識しています。

【あざの】 春虎の曲ってどんなだろうと思っていたら、エラい格好いい曲が上がってきてびっくりしました(笑)。アニメ終盤のシリアスな展開を思わせるような、ダークなイメージがすごく格好いい。春虎だけでなく夜光のイメージも混じっているのかな、とか。また、春虎というキャラクターの視点というより、彼や夜光を中心とする物語全体の雰囲気も表現されているのかないうことを想像しながら聴かせていただきました。

――次の「ALGO~who knows it?~」は春虎の親友・阿刀冬児をイメージした曲ですね。

【黒崎】 曲が届いた時点で冬児の荒々しさがすごく浮かんできました。彼の体の中でいろいろなことが起こって、その葛藤がすごく合うだろうなと。特に冷静な人物だと思っていたのでそこを取り払うと衝動的な面が出てくる。そんな自分だからこそできることがあるという答えを導きながら突き進んでいくイメージですね。叫ぶように、妖しく渦巻いている感じが出せればと思ったので、Aメロでは自分の中でも出したことがないくらい野太い声で、サビは爆発するように歌いました。このアルバムの中でも一番荒々しさと激しさが詰まった曲になりましたし、生音映えしそうなのでステージになったら化ける曲になると思います。

【あざの】 素直に格好いい曲ですよね。歌詞もすごく冬児っぽいところをいっぱい書いて頂けました。冬児というキャラクターは、子どもたちの中では一番大人びているんですけど、過去からの後遺症で半分鬼になりかけていて、自分の中の破壊衝動を抱え込んでいるんです。それをいなしながら生活をしているため常に斜に構えるようなスタイルが自然と身についている。その二面性をうまく書いてもらっていると思います。

――4曲目の「...Because, in SHADOW」大友(陣)先生の曲は?

【黒崎】 曲がすごくアップテンポでトランシーで音の散らばりとか動き方がすごく難しかったんです。Aメロでは漢語の語りを多くして大人感を出しつつ、サビのところで俯瞰して主人公たちのために何かできないかなと思っていたりする父性を出せたらいいなと思って。歌う時も声色を大人目にできないかなと試行錯誤していきました。

【あざの】 大友の曲は歌詞にビックリしました。私としては彼を若いくせに枯れた奴とか怪しげな関西弁を使っていたりとか、けっこうダサく書いていたつもりなんですが、こんなに格好良く見えているとは(笑)。曲もアップテンポで格好いいですし、イケメンのライバルキャラの歌みたいでビックリしました。

【黒崎】 私にとってはすごく格好いい人です(笑)。

【あざの】 アニメでは遊佐浩二さんが声を担当されているからどうやっても格好良くなりますよね(笑)。春虎が表の主人公だとすると大友はなかば裏の主人公みたいな立ち位置にいる人です。アニメで最初に本格的な呪術戦を行うのが彼なので、そこでは問答無用で格好いいんですよね。大友の一番いい面をとって格好良く描いてくれたテーマソングになったんじゃないかなと。

――大連寺鈴鹿の「fixxx and lie」はどんな曲でしょうか?

【黒崎】 曲自体にすごくパワーがある曲で、聞いていて鈴鹿ちゃんが戦っているところが浮かびました。鈴鹿ちゃんの心には特別な人がいて、それを自分の口から素直に上手く伝えられないし、叶わないような感じもしている。それが女性としてすごく共感できる面だったので、女の子らしいところをテーマにして書いていきました。

【あざの】 鈴鹿という子は『十二神将』の一人で実力のある陰陽師ではあるのですが、年齢は仲間内で一番下ですごく背伸びしている女の子なんですよね。その背伸びして突っ張っているところが仲間とのやりとりで段々等身大になりつつ、その等身も伸びていく。うまくいかないとか理想像とのギャップがあるって、誰でも持っている葛藤だと思うんですよね。歌詞を読んでいて彼女のキャラクターがわかりやすく伝わるんじゃないかなと思いました。


――コンのテーマである「K・O・N ♡」はまたガラッと雰囲気が変わりましたね。

【黒崎】 コンは大好きなんです(笑)。最初に出てきたときからあのモフモフ感とか、緊張して喋れないけどやるときはやる感じとか、もう欲しいくらいです(笑)。キャラソンだったらコンの口調で書くとかの方法があったのですが、トリビュートソングとしては、春虎くんが大好きで仕方ないけどそれをなかなか言えない、可愛らしくもいじらしいところをふんわりとした曲に載せられたらいいなと思って日常を切り取ったような歌詞にしてみました。すごくポップなミディアムテンポの曲で毛色が違っているので楽しんでほしいですね。

【あざの】 この曲があることでアルバムがさらにバラエティ豊かになるんだろうなという感じがしています。コンって特にアニメでは、理屈がどうではなく、動いて喋っているのを見て楽しめるキャラクターになっているんですよね。その感覚がこの曲にも反映されていると嬉しいかなという気がします。

――倉橋京子の「Dysnomia-ディスノミア-」について教えて下さい。

【黒崎】 この曲は夏目くんが好きという気持ちが閉ざされてしまったときの気持ちを書きました。曲を聴いたときもすごく儚げな印象で線が細くて綺麗で、この曲に合う京子ちゃんの感情はこれだろうと。彼女が星詠みという能力を持っている部分も踏まえて星を要素として取り入れつつ書いていきました。歌うときはすごく試行錯誤しながら作っていきました。とにかく京子ちゃんの女性らしい面を引き出したかったので、切なく儚く今にも消えてしまいそうだよという気持ちを声でも表現できたらなと。2番のサビが終わった後のメロは吐息のようなささやきかけるような声で収録し、今はまだ答えがわからないという気持ち、夏目くんをいつか夏目ちゃんと呼べるまでの間を描いていきました。

【あざの】 曲も歌詞もアダルティーな雰囲気だなと思いました。実際、グループの中ではお姉さんポジションでみんなのまとめ役みたいな所もあるし、優等生なんだけど気さくでたいへん付き合いやすいキャラなんです。でも、彼女自身はアニメが終わった段階だと、けっこうハードな立場に置かれています。新しい力に目覚めたといっても、それが必ずしも幸福に直結するものではない。けど、彼女も新しいステージに登っていかなくちゃいけない。そんな、大人になる前の女の子の心情を描いて頂けたかなという感想を持ちました。

――つづいて、百枝天馬の曲「Trying! Trying!」について教えてください。

【黒崎】 天馬くんは一番共感できたキャラクターでもあるんです。自分の秘められた力をどこかで信じているけど、自信が持てずにいる。そんな彼もみんなに導かれて成長する様子から、トライしてみなくちゃわからないよねという感情をもらい、その気持ちを歌詞に書きました。この曲はフレッシュに、声色も自然に歌いました。勇気がわくような自分の力を信じて一歩先に行けるような曲になればと思いました。

【あざの】 天馬は主人公の友人グループのなかでも地味で目立たない"普通の人"ポジション。でも、彼だからこそできることもあるし、そのやり方で仲間をサポートしていく立ち位置のキャラクターです。だから天馬の曲で「Trying! Trying!」という曲名がすごくしっくりきて、ステキだなと感じました。そんなに実力がある人物ではないんだけど、それでもトライするというのは天馬らしいなと思いました。曲も繊細な感じがいいし、歌詞もすごくストレートで天馬の心情としてしっくりくるなという曲だなと思いました。

――「ひまわりと夏」は夏目の曲として景色が浮かびます。

【黒崎】 アニメ最終話の夏目と春虎のやりとりがすごく美しくて、そこからイメージが広がって書いた曲です。最終話を見たことで第1話の夏の描写をすごく思い出しました。ひまわりのようにパッと笑った春虎くんと、偽りの姿をした夏目ちゃんが偽りなく笑っていた時間が今後も続いていってほしいなという気持ちも込めて、私なりに言葉にさせて頂きました。爽やかに可愛く、できる限り聴いた方が想像できるような声質で行けたらとビブラートはあまり使わず、ストレートに歌うように心がけました。

【あざの】 アニメの第3話までの描写を想起させますよね。最終回を見てから序盤を思い出したと今聞いて、なるほどだからこういう形になったんだと思いました。他の曲は抽象的な歌詞が多い中で、これはビジュアル寄りなんですよね。直接語るのではなく風景を通して心情を語っていくような歌詞だったので、最終回の夏目が当時の心情を思い起こしながら語りかけているという詞は、なるほどよくできているなと思いました。

【黒崎】 この歌詞を書いた後で、ブックレット特典の先生書き下ろしショート小説を読ませて頂いたら、偶然にも最後にこのタイトルと近い言葉で締めくくられていてすごく感動しました。

【あざの】 あっ、言われて気づきました(笑)。うまくシンクロしましたね。「REINCARNATION」というアルバムタイトルに合わせて春虎の出生に関するエピソードを書いたので、アニメで「東京レイヴンズ」を知ってくれて、このアルバムを買ってくれる方だったら分かる話だと思います。黒崎さんのファンの方には、ここから作品の方にも興味を持ってくれると嬉しいですね。


――アルバムのラスト、タイトル曲「REINCARNATION」は誰に向けてでしょうか?

【黒崎】 みんなへ向けたメッセージの曲も作りたいなと思いまして、私なりになんですが「東京レイヴンズ」を観てきた中で感じたこと、これからに対する希望を最後に聞いて頂きたいなと思って作りました。キャラクターたちを俯瞰で見て、彼らの背中で歌っているような目線で歌わせてもらいました。キャラクターたちの力強い姿を見ていて私もすごく感じるところがたくさんあったので、その感謝の気持ちやトリビュートという思いをこの曲に詰め込んで歌いました。

【あざの】 すごく綺麗な曲ですよね、心地よく曲が続いていて、ずっと聴き入ってしまう曲ですね。まさかキャラクター全員への応援歌というかメッセージソングとは思っていなかったので、それが嬉しいなという気持ちです。余韻も残る感じですし。それまでどちらかというと激しい曲だったので最後にこれが流れるというのはすごく綺麗だなと思います。

――最後に、こちらのアルバムを手に取るリスナーと読者の方へおふたりからメッセージをお願いします。

【黒崎】 今日は原作の先生を前にした対談ということですごく緊張しました(笑)。改めて「東京レイヴンズ」という作品に関わることができたことがすごく嬉しい思いです。あざの先生が書かれた作品がなかったら、これらの楽曲たちも生まれることはなかったので、そうした出会いを下さった先生に感謝をしています。曲もI'veさんにステキな曲をたくさん作って頂いて、いい作品ができたと自信を持って言えるものができあがりましたので、「東京レイヴンズ」とのリンクをみなさんに喜んで頂けるものになったと思いますので、ぜひともお楽しみ下さい。

【あざの】 こういう企画はすごく珍しいですし、私にとってはすごく光栄なことです。なにより作品にとって大変素晴らしいことですし、世界観がさらに大きく広がったことを嬉しく思います。「東京レイヴンズ」のファンの方にはキャラクターを思い浮かべたり、アニメの映像や原作の描写を連想しながら曲を楽しんでもらいたいですね。黒崎さんのファンのかたにとっては1枚でこんなにバリエーションの黒崎さんの曲を聴けるという点で、すごくお得なアルバムになってるんじゃないかなと思います。ファンのかたがどのように受け取ってくれるのか、今から感想を楽しみにしています。

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東京レイヴンズ|原作スペシャルサイト

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